塩の達人
Tっちゃんのおしゃれオフィスに遊びに行く機会があった。
文房具にまじってデスクに並べられた小瓶をみると、
「エジプトの塩」
「マグマ塩」
「ヒマラヤ岩塩」
その他なんかわからない塩、塩、塩…
オフィスにも置いてるってどういうこと?「肉にはこの塩、サラダにはこの塩、あ、でも今日の気分はこれかな〜♫」みたいな使い分けとかしちゃってんのかしら…
そういえば昔、Tちゃんの家で鍋パーティをしたとき「もう、たかが塩って思ってたけど、やっぱもう全然違うんだよね!全っ然!」と、酔っ払って岩塩について熱く語っていたのを思い出した。
すっごい興味本位で塩について色々聞いてみたかったけど、「オタク」や「マニア」といわれる領域について気軽に踏み込むとやけどするって話も聞いたことがある気がするし、とりあえず塩には触れず世間話を続けることにした。
わたしが近々旅行に行くというたわいも無い世間話をしているときだった。
「ねぇ、お土産になんの塩がほしい?」
(しまった、「お土産なにがほしい?」って言うつもりが完璧に先走ってしまった。)
さいあくの形で塩について言及してしまい、ヒヤッとしていると、Tっちゃんはちょっとびっくりしつつ、
T「あぁ…これ?なんか数年前からみんながやたらと塩をくれるんだよね。お土産とか、手土産とか、誕生日プレゼントとか…。嬉しいけど、塩ってそんなすぐになくなるものでもないでしょ?普通にお土産にはチョコレートとかがほしいよ。」
私「え、だって塩めっちゃすきでしょ!?(動揺)」
T「一時期、料理にはまってたとき岩塩とか使ってたことがあるけど、それだけだよ。なんでこんなに塩キャラになってしまったのか本当にわからない…わからない…」
なんと、塩マニアや塩オタクどころか塩ノイローゼの一歩手前だった。
ここからは推測だけど、酔っ払ったTちゃんが岩塩についてたまたま熱く語ったことで、それを覚えてた友だちたちがお土産に塩をプレゼントする事例が相次ぎ、デスクにどんどん増える塩を見て、他の人にも「塩=Tちゃん」という図式が確立されてしまったんだろうと思う。「あ、めずらしい塩あるー。Tちゃんにあげよう!」みたいな。
こういうまわりが勝手に作り出したイメージに翻弄される人って結構おおいのかもな、とピカピカの塩の瓶を見ながらぼんやり思った。
安心して、お土産にはマカダミアナッツとかを買うからね!