リサちゃんとオバタサンチェリー
「オバタサンチェリーが死んだ」と、小学校の帰り道にリサちゃんが言った。
「オバタサンチェリー?」
あだ名なのか、外国の人なのか、ゲームの中の話なのかわからず戸惑うわたしをよそにリサちゃんは淡々と話を続ける。
よくよく聞くと、金魚すくいですくった金魚のことらしい。
「そんな名前だったの?」と、金魚の死をかすめるほどのインパクトを持つ名前についてわたしがたずねると、リサちゃんはことも無げに「うん、死んでからつけた」と言った。
金魚のお墓をつくるときに「オバタサンチェリー」って書いてあるミニトマトのパックに金魚を入れて土に埋めたから、オバタサンチェリーになったらしい。
オバタサンチェリーがミニトマトの種類なのか農園の名前なのかはよくわからないけど、わたしは今でもミニトマトを食べるときにふと、金魚のことを思い出すことがあるよ。
リサちゃんはたぶん忘れてるんじゃないかなぁ。